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かつて高度経済成長とよばれる時代がありました。1965年頃、先進国がそろって好景気に突入してから1970年代初めの第一次石油ショックによって収束するまでの時代です。 ところで、一般的には「先進国がそろって」とされているのですが、中でも日本の活躍には際立つものがあったように思えます。 たとえば半導体産業。当時、国内で生じた電卓戦争と呼ばれる開発競争に端を発した技術躍進は凄まじいもので、ついにアメリカの技術力を抜いて世界一の座に躍り出るという快挙をなしとげました。 その他にも自動車・カラーテレビ・クーラーといった新三種の神器もこの頃に一気に家庭に広がり、日本製品の品質が世界に広く認められだしたのもこの頃です。 このように、当時の技術開発能力をみてみると1965年〜1970年にかけて日本にはアメリカを含め外国よりも優秀な人材が多く存在したような気がしてなりません。 この時の人材がどういう世代だったか、例によって45度の傾きで見てみましょう。 ![]() 高度経済成長を支えた世代 主力世代を育成した人達もさることながら、実は主力世代が子供時代に触れたものに特別な価値のあるものが非常に多いのです。 例えば鉄腕アトムに代表される漫画。 最近は漫画しか読まない漫画家が増えていますが、この頃の漫画家は違いました。様々な分野の専門書を熱心に研究して、たとえば「何十年後の未来はこうなっている!!」と空想を膨らませては次々と惜しげもなく自分達の研究成果を読者に提供しました。 一例として鉄腕アトムに出てくる都市景観が現在の東京とほぼ一致していたりしますが、これは手塚治虫の空想が現実社会と偶然一致したのではなく、しっかりとした研究の結果得られたものだと思います。当時の漫画の多くには下地となっている熱心な研究姿勢に舌をまきます。 それから漫画ではないのですが、中でも特筆すべきは松下幸之助の肝入りで作られたナショナルキッドという特撮ヒーローTV番組があります。 この番組の凄いところは「敵が科学技術を用いて人類に攻撃を行い、これに対して人類も同様に科学技術を結集して撃退する」というストーリーが一貫しているところです。番組中では毎回、
といった様々な分野での最先端の研究施設や研究員の夢や希望、あるいは熱意を余すことなく紹介しています。 そしてナショナルキッドが平和を守るたび、番組中で子役に向かって 「科学技術ってのは人のためになって素晴らしいものだね。 でもあんな風に悪い事に使ってしまうと害になってしまう。 みんなは良い事に科学技術を発展させていこうね」 と熱いメッセージが投げかけられていました。 この番組は敵の大ボスを倒しても第2部、第3部と続編が次々と作られたほどで、当時の子供達に絶大な共感を呼んでいました。松下幸之助から子供達への「科学技術の素晴らしさ・魅力」という最高のプレゼントだったのです。 そして、鉄腕アトムやナショナルキッドなどが描く未来の科学技術に胸熱くした子供達はやがて、高度経済成長を支え、日本のGNP(国民総生産)を世界第3位にまで押し上げる原動力となっていったのです。 ちなみに2004年現在、彼等は55〜65歳を迎えています。NHKで「プロジェクトX」という番組がありますが、ゲスト出演にこの年齢層の方が多いのはまさにこの世代といえます。 高度経済成長の時には戦時中の技術者の生き残りが後進の若い世代を育て、そして若い世代もまた彼等なりに情熱に燃えており、技術・ノウハウ・知識などを渡す側と受け取る側の思いが共に揃った成功例だと思います。 そして今、ここまで紹介してきたように学校教育のシステムは歪められているものの、まだ現在のところ大人側の人材が枯渇しているところまではいっていないような気がします。 先日、小学6年生の国語の教科書(東京書籍)を見る機会がありました。小学校を卒業していく子供達に贈られる最後の教材はシム・シメ−ルという画家の詩「地球のこどもたちへ」という作品。素晴らしいです。 シム・シメールという画家は地球環境に熱心で絶滅に瀕した動物達を好んで描き、そして背景にはいつも地球が浮かんでいます。教科書にはその作品がカラー紹介されて、文章が続きます。 子供達にやさしく、愛情をこめて、地球の尊さ、命の大切さ、そして自分達が地球にどのように接していかなくてはならないかを見事にうたいあげています。大人が読んでも本当に心が洗われるような心地がするものです。 教科書でなく、単体でも絵本として販売されているので是非一度読んでみて下さい。絵本といっても挿絵は第一線の画家が描く見事な作品ばかりで、どちらかというと画集に詩がついているという感じで大人子供を問わずに楽しめます。 お役所から「漢字を減らせ」だの「明治文学は要らない」だのと様々な指示がある中で、このような素晴らしい詩が教材に選ばれるとは教科書を作成する業者などの中にもまだまだ気骨のある人材はいるようです。
さて、今のところは大人側の人材は健在なようなので、残る問題としては如何にして子供達に学校の勉強に夢や希望を持ってもらうか・・・という事になります。 子供達にどうやってこれらを与えることができるか・・・というと、やはり今ならメディアを活用するのが一番でしょう。昔は漫画とTVだけでしたが、今ではインターネットも含まれます。学校教育の場でも、それらを一つのジャンルとしてではなく、縦横に活用すれば良いと思います。 そしてコンテンツという面で、最近特に頑張っているのがNHKです。 中でも4〜6歳を対象としたピタゴラスイッチ(水曜日 10:30〜10:45 火曜日 9:15〜9:30(再放送))は見事の一語に尽きます。子供がいるご家庭ではお母さんも一緒になって見てあげてくださいませ。もしかしたらお母さんの方が熱中してしまうかもしれませんが(笑) その他、内容的には少々マニアックですが、「十二国記」というやはりNHKのアニメ番組も様々なことを教えてくれる優れた作品です。例えば登場人物の一人が心から尊敬する相手に対してお辞儀をするシーンが2度あるのですが、他人をうやまえる心を持つことがこれほどまでに凄いものなのか・・・とため息がでます。 最近の番組ではやはり手塚治虫の「火の鳥」(またまたNHK)も良かったです。 新しく始まった「アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル(日曜日19:30〜20:00)」も少し期待しているのですが、里見浩太郎が声優を演じるポアロ、まるで水戸黄門がロンドンを歩いているようでビックリでした(笑)。 関係者の力量次第でお説教臭さが表にでないかちょっと心配ですが、頑張っていただきたいものです。 先ほど、「メディアを縦横に活用」という事について少しだけ触れましたが、ここではその具体例を一つ紹介してみたいと思います。 せっかくなので、メディアとして壬申の乱を扱っている「火の鳥:太陽編」を使用してみましょう。 作品中で、病床の天智天皇が弟:大海人皇子を呼び寄せるシーンがあります。
時間にして約3分の短いシーンですが、このシーンの面白さに気付く子供達はどれだけいたでしょうか。 実はこの場面、非常に高度な駆け引きの場だったのです。 もし大海人皇子が帝位継承を受諾した場合、「天皇の位を狙う叛意あり」として強引に死罪とし、その後で天智天皇の子:大友皇子を継承者として立てようという計画が進んでいたのでした。 そして大海人皇子はこれを拒絶することで見事に吉野に難を逃れることになるのでした。 また、「虎に翼をつけて」というのは「こぶとり爺さん」などで親しまれている古典の名作:宇治拾遺物語がその出典です。 つまり、歴史の授業と国語の授業がお互いに関わりあうエピソードな訳です。 では天智天皇と弟:大海人皇子が絡む話を順に見ていきましょう。 茜さす紫野行き標野行き 野守は見ずや君が袖振る これは額田王という女性が詠んだ歌で、万葉集の一つです。学校で習うところでは、この歌の意味は「茜色に照り輝く紫草の花野を行く、あなたがそんなに袖を振ってみせては番人に見とがめられてしまう」となっています。 なんの事だかサッパリ解りません。見とがめられたらどうなるというのでしょうか? 実はこの歌、不倫の密会デートの歌なのです。額田王は当時、天智天皇の奥さんでした。そんな彼女の世紀の大不倫です。見つかってしまえば自分だけでなく、愛しい人まで死罪になってしまいます。だから「野守に見つかってしまわないか」と気が気でないのです。 ところがいつの世も男は愚かな存在です。そんな事お構いなしで「来たよ来たよ〜!! こっちこっちぃぃぃ!!!」と大はしゃぎで手をブンブン振ってやってきてしまうのです。 額田王は「あっ、あっ、だめぇー、もっと、そっとそぉっと、しずかに・・・お願い〜!!」と半ば大慌てで、でもそれでもそんな風にやってきてくれる男にこの上なく心をときめかせて迎えてしまうという、非常にみずみずしい密会デート(?)を詠んだ歌だと思います。 そして、この時の大きく手を振ってやってくる不倫相手こそが、実は大海人皇子なのです。 ただ、これを単純に不倫と言い切ってしまうのには少々差し障りがあります。 というのは、この二人は元々は夫婦で十市皇女(といちのひめみこ)という女の子までもうけていました。ところが天智天皇は弟の嫁が歌詠みが上手なことに嫉妬し、権力をもって強引に自分の嫁にしてしまっていたのです。だから、大海人皇子は不倫相手というよりも元旦那と言った方が正確かもしれません。 そして天智天皇ですが、そんな無茶を常日ごろから行っていたものですから人望はどんどん低下する一方で、周囲の人は大海人皇子に期待をかけるようになっていきます。天智天皇はそれがまた面白くないので一層無茶をしたり、大海人皇子を朝廷から取り除こうと思案をめぐらすようになるわけです。 そんな中、嫁さんを奪った天智天皇が嫁さんを奪われた大海人皇子を枕元に呼びよせ、「火の鳥」で紹介されていたシーンに繋がるのです。 そしてついに天智天皇は崩御します。後に残った子:大友皇子を帝位につけようと考えていた側近達にとって、やはり人気のある大海人皇子は邪魔な存在で仕方ありません。 吉野にいる大海人皇子の方にもそういう雲行きは噂となって伝わり、鵜野讃良(うのささら:後の持統天皇)らをつれて奈良県吉野から国道25号線沿いに三重に脱出。 一方、大友皇子側は天智天皇の人望の無さが裏目となり、将軍を誰にするかなど派閥争いをしているうちに貴重な時間を浪費してしまいます。 大海人皇子は鵜野讃良を三重県:長島スパーランド手前の桑名というところに休ませて、そのまま伊勢で軍勢をまとめ、国道25号線沿いの鈴鹿の関と国道1号線沿いの不破の関(関が原)の封鎖に成功。これにより大友皇子の命令は東国の軍隊に届かなくなってしまいました。 大海人皇子の軍はそのまま国道1号線に沿って進軍し、琵琶湖を右回りと左回りに回り込んで都(大津)に雪崩れ込み、大友皇子が自害することで勝敗が決します。 乱にあたり、伊勢で神の加護を願い、そしてそれが成就したことから、天武天皇(大海人皇子)は伊勢神宮に代表される日本古来の神々を大切に考えるようになっていきます。 (このあたりは「火の鳥」でも触れられています) このように、宇治拾遺物語(国語)、万葉集(国語)、壬申の乱(社会)、地理(社会)と複数の教科をまたいで一連のことを同時期に学び、そのうえで「火の鳥」のビデオ鑑賞とかすると、学校の勉強で日常のTVアニメがより楽しくなるといった事に子供達は気がつくことになります。 そして一通り終えたら今度は「壬申の乱の実在人物をパロディー風に扱った(という説がある)SFタッチの日本屈指の名作があります。勿論映画にもなってます」といって竹取物語の勉強に引っ張るのも面白いかもしれません。 このように、国語であって国語でない、社会であって社会でないというように教科という垣根を越えて様々な関わりをあわせて提示していくと、自然と学校の勉強と社会の出来事の垣根も越えて様々に魅力を感じてくれる子供達が増えてくるのではないかと思います。 よく「飢えた人に魚をあげるか、魚の釣り方を教えるか」と言われますが、子供達には是非自ら知識を得る楽しさや喜び・魅力を学校教育を通じて知っていただきたいものです。入試のテクニックに終始する内容を超えて、もっと奥深いものを知る機会を与えてあげようではありませんか!! これら一連の話は般若心経の秘密の事例紹介として記述しました。もしよかったらこちらもご覧ください。 |
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