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トヨタ叩きに思う

アメリカであったトヨタの公聴会について思ったこと

車の急加速を体験したスミスさんの証言の様子は以下のとおり。

  • 米テネシー(Tennessee)州のロンダ・スミス(Rhonda Smith)さんは、2006年10月に起きたこの出来事の際、死を覚悟したと証言した。
  • 新車の「レクサスES 350」で高速道路に合流したところで、スミスさんは突然、時速70マイル(約113キロ)から100マイルへの不可解な急加速を体験した。
  • 高速道路で運転中、急加速が始まった。速度を一定に保つクルーズコントロール装置が点灯。この時、アクセルペダルに足をかけておらず、恐らくこの装置が加速の原因と考えていた。
  • 装置を切ったが加速は続いた。ブレーキはまったく利かなかった。ギアをバックに入れても走り続け、速度計は最後には時速160キロに到達した。
  • 「車が最高速度まで加速していくと思った。次のガードレールに車をぶつけて他の人を巻き込まないようにしなければと考え、神さまに救いを求めて祈りをささげた」と、スミスさんは語った。
  • 短距離無線通信規格のブルートゥース(Bluetooth)搭載の携帯電話で、夫に電話をかけたという。「夫にはどうにもできないことはわかっていた。けれども、もう一度だけ声が聞きたかった」と、スミスさんは涙をぬぐいながら語った。
  • 夫へ電話をかけたとき、「神の力が介在し」、(急加速時と)異なる行動を試みたわけではなかったが、非常に緩やかながら減速が始まった。車の時速が約53キロまで減速したところでエンジンを停止させることができた。
  • 販売店に持ち込んだが、数週間後、車には何の問題もなかったと言われた。納得できないと突っぱね、トヨタ側に何度も照会を繰り返した結果、最終的に「適切に整備されていれば、ブレーキは常にアクセルに優先する」との回答が書面で寄せられた。
  • 「それがウソだということはわかっていた。それに、こういったことが起きたのは、ブレーキが適切にメンテナンスされていないからに違いないと、トヨタが文書で返答したことにわたしたちは憤慨した。車の走行距離は、まだ3000マイル(約4800キロ)以下だった」
  • スミスさんは紛争処理の民間機関「National Center for Dispute Settlement(NCDS)」に問題を持ち込んだ。しかし、その経緯は「完全な茶番」だった。
  • 地元のレクサス担当技術者は、1時間の距離しか離れていないにもかかわらず、NCDSの聞き取りに電話で参加し、スミスさんに原因があると証言した。
  • 「トヨタが再度、わたしたちをうそつき呼ばわりしたことに、もちろんとても憤慨した」(ロンダ・スミスさん)
  • スミス夫妻はさらに米運輸省道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration、NHTSA)に相談した。
  • 調査員が派遣されたものの、NHTSAもトヨタも真剣に対応しなかったという。そして、2008年に、スミス夫妻はこの問題の追及をあきらめた。
  • 「わたしたちの努力で、ほかの人たちが急加速の不必要な恐怖と苦しみにさらされることがなくなればと思っていた。それが失敗に終わったことに気づき、わたしたちの心は深く傷ついています」
  • 「しかしこの失敗は、本日、トヨタとNHTSAにも共有されたことでしょう。両者は、思いやりのない対応と人命軽視の姿勢をみせた」
  • 「強欲なトヨタよ、恥を知れ。責務を果たさなかったNHTSAよ、恥を知れ」

注目するべきところは「ギアをバックに入れた」と「「神の力が介在し」〜非常に緩やかながら減速が始まった」という点。 車の機構を検証していくと次のようになります。

レクサスのシフトレバーはジグザグに

(左ハンドル車)

となっています。詳しく見たい方は「レクサス 内装」で検索をかければシフトレバーの画像がみつかります。

まずはP(パーキングギア)に入った可能性について。

もし走行中にPにギアが入ったならギアが物理的に壊れるか、一気にタイヤがグリップを失ってスピンしてしまう筈なので、Pに入ったことは考えられません。また安全を考慮して走行中はギアがPに入らない仕様になっている(はずですよね、トヨタさん?)。なのでギアはPには入っていない。

次にR(バックギア)に入った可能性について。

Pと同様に本当に走行中にRにギアが入ったなら物理的に壊れるかスピンを招きます。それにギアをRに入れようとするなら入る前に物凄い音がするはずです。ところがその音については証言にでてきません。つまり、当該車両のギアはR(バックギア)にも入っていません。

ではD(ドライブ)状態からギアはどこに入ったのでしょうか?

消去法でいけば残るのはS+(シフトアップ)、S−(シフトダウン)、N(ニュートラル)です。 S+とS−はギアの比率が変わるだけなので走行に大きな変化はありません。当のスミスさんはRギアだと思い込んでいるようですが、実際にはその手前にあるNギアに入ったのではないでしょうか。ギアがN(ニュートラル)になればアクセルがオンの状態でも空気抵抗や路面抵抗などで徐々に速度が下がっていくのが道理です。

なので、「「神の力が介在し」〜非常に緩やかながら減速が始まった」という証言にある「神の力」とはN(ニュートラル)ギアとみる事ができます。

機構から判断すると、このNギアが一連動作を全て説明できる鍵となるわけですが、ここまででスミスさんの証言と比較すると食い違うポイントが二つあります。

  • スミスさんはRギアだと主張しているが、当時の車の挙動や機構から判断すると間違いなくNギアである。
  • Rギア(実はNギア)に入れたタイミングが証言の時系列と異なっている。

「死を覚悟」という程の恐怖の中で気が動転して混乱する事は仕方のないことです。自らの運転操作を全く把握できていなかった動転ぶりがここから伺えます。しかも事件から既に4年の歳月が経過しています。記憶も曖昧な部分が生じていて不思議ではありません。

そこで公聴会に出席していたトヨタ自動車の米販売子会社レンツ社長は彼女にいくつかの質問をするべきでした。

「あなたは神の力というが、車は神の力では動くことも止まることもしません。断定とまでは言いませんが、もしかしたら(May be)、それは「Nギア」によるものだったという可能性はありませんか?」

スミスさんから返ってくると期待される回答は次のようなものが考えられます。 「もしかしたら・・・。(May be)」。

次に確認するべきは約53キロまで減速した後で、どのように車を停止させたのか・・・ スミスさんに「右足でブレーキペダルを踏んだかどうか」の確認です。 話からすると減速の結果、動転していた気が収まって少し冷静になってきている頃になります。普通であればブレーキペダルを試すのではないでしょうか。 おそらく答えは「Yes」でしょう。

更に質問。

「事件後に販売店に持ち込んだとの事についてです。急加速から停止後、販売店まではレッカー移動したのか、それとも自走したのか?」 これについてはどのような回答が返ってくるかは解りませんが、あくまで当方の主観で雰囲気的に「自走」したような感じがするので以下、「自走で販売店に持ち込んだ」と回答したものとして話を進めます。

最後の質問。

「停止後、改めて車を発進させる際に何かトラブルはありませんでしたか?」 勿論違和感があれば即座にエンジン停止してレスキューを呼んでいたでしょうから、間違いなく「No」が返ってくるはずです。

もしフロアマットにアクセルペダルが引っかかったのが急加速の原因であれば、車が停止した後もペダルが踏み込まれたままの状態になっていた筈です。車を再スタートさせるとき、ペダルの位置が踏み込まれたままであれば嫌でも気がつきます。

つまり、停止した時のアクセルペダルは踏んでいない状態に戻っていた事になります。

となると・・・ 証言と食い違う3つ目のポイントの存在の可能性が浮かんできます。 最初の「ブレーキはまったく利かなかった。」という発言ですが、踏んでいたのは本当にブレーキペダルでしょうか? どのような状態であれ、ブレーキを踏めば少なくとも加速が鈍るといったような反応は感じられるはずです。それが「まったく感じられなかった」というのであればブレーキペダルは踏まれていなかった、つまり右足が踏んでいたのはブレーキペダルではなくアクセルペダルであった可能性が高いことになります。

結局・・・次のような感じで車の挙動が全て説明できてしまいます。

何らかの理由(勘違い?)で右足がアクセルペダルを踏み続けた為に急加速が発生し時速160キロに到達。しかる後にN(ニュートラル)ギアで時速約53キロまで減速。動転していた気が静まって、右足を改めてブレーキペダルに移動させてブレーキをかけた。(当然この時点でアクセルペダルは通常の位置に復帰)

つまり車に異常はなかったという事です。

ちなみにアクセルペダルを踏んだ理由としてはクルーズコントロール装置を解除(普通はブレーキペダルを踏む)しようとした際に間違ってアクセルを踏み込んで加速。ビックリして慌ててブレーキだと信じているペダル(実はアクセル)を更に踏み増ししてしまい・・・という推測も立つのですが、これについてはあくまで推測にすぎないのでここでは置いておくとします。


ところでレクサスの証言をしたスミスさんは「神の力」という非論理的な発言をしています。

これに対してその場でトヨタの人間が上記の内容を展開して論理的に論破していたら、アメリカ世論は「神の力 vs 論理」のどちらを支持していたでしょうか?

アメリカ世論の激怒して振り上げられたコブシは、今度はアメリカ議会に鉄槌となって落ちていた事でしょう。

そうなった場合、選挙が近いらしいのでアメリカ議会議員の当落や、ひいてはオバマ大統領の支持率にまで影響が生じたことと思います。

とくにオバマ大統領は医療保険問題などで後がないので一層の窮地に立たされる事となります。

そのタイミングで日本政府はオバマの支持率を支えるようなコメントを出してあげるのが理想ですね。

ついでにオバマ大統領におねだり・・・

「シーシェパードの海賊行為はけしからん!!」ってホワイトハウスのTVカメラの前で お・ね・が・い♪

どうでしょうか?


どんなトラブルにせよ、正しく抗議できるタイミングは限られている場合が多いです。 たとえばオリンピックなどでジャッジが間違いだと思っても、競技が終了して後日に文句を言っても判定は覆りません。

今回の場合も唯一、公聴会の席上でのみ、それが可能だったと思います。

どのようなものにも機というものがあるので、残念ながら公聴会の後ではどんなに頑張って抗議したところであまり有効でないでしょう。

この問題への対応については、いろいろと学ぶべきところがあったように思います。


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2010/03/23 07:11